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さつじんき
殺人鬼
浜尾 四郎
「名古屋新聞」1931(昭和6年)4月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,139 字 · 13 页
藤枝はこういうと、ケースから新しいシガレットをとり出して火をつけた。
「だつてありや特別の場合だろう。いつも女同志がああいう位置をとるとは限るまい」
「だから君にはじめはつきりきいたろう。君がそういう事に気がついているかどうかを。僕が今まで観察した所によると二人づれの若い女は必ずああいう風にすわる。必ずと云つて悪ければ、十組の中八組まではああいう風に位置をとるものだよ」
「そうかな」
「そうさ。つまりこういう事実が認められるんだ。若い婦人同志はボックスにまずああいう風に坐る。男同志だとわれわれみたいに向いあう。それから男と女の二人づれだとやはりむかい合うという事実だ」
彼はこう云つて得意そうにプカアリと煙を吐き出したのである。
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「そうかな。じや君、女同志だと何故ああいう風に腰かけるか、その理由を説明して貰いたいな」
私は藤枝がいつもの通り、何か吹きはじめるかと期待しながらこうきいたのである。
「いや、それは知らない。そんな事は、心理学者か生理学者にお任せするんだな。僕の商売はそこまで立ち入る必要がないんだよ、ただある事実を事実として観察していればいいのさ。