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すいちゅうのかいじん
水中の怪人
山本 周五郎
「少年少女譚海」博文館、1939(昭和14)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,922 字 · 18 页
闇の海上の冒険、空缶は投げられた
社長は給仕を去らせてすぐ封を切ったが、ひととおり読むと、声を震わせながら、
「やっぱりそうだ、脅迫状だ」
と云って文吾に渡した。
受取ってみると、赤い紙に邦文タイプライターで、左のような文句がうってあった。
鹿島啓吉の生命は安全なり、ただし左の条件を実行せらるるを要す。
一、水中砲の設計図を油紙に包んで空缶に入れよ。
一、五月二十二日夜九時、灯をつけたるボートにて月島五号地沖へ来れ。
一、右海面に設計図入りの空缶を流し、そのまま直ちに立去るべし。――以上実行のうえは、翌日早朝、敬吉を無事に貴家まで送りかえすべし。河童第一号
闇の海上の冒険、空缶は投げられた
平林文吾は研究所をとびだした。
「河童第一号」と書いてあるからには、敬吉を掠ったのも、やはりいま評判の「河童」の仕業にちがいない。今度は誰もその姿を見た者はいないが、船室と甲板に残っていたあの濡れた足跡が証明している。
河童は初め、良子を誘拐するつもりで船室へ入り、まだそこに良子がいないので、……甲板にひとりでいた敬吉を掠ったのであろう。……むろんそれは、水中砲の設計図を奪う人質としてだ。
越前堀の雑貨店から始まった三つの事件には目的がなかった。