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すいちゅうのかいじん

水中の怪人

山本 周五郎

「少年少女譚海」博文館、1939(昭和14)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,922 字 · 18 页

青空文庫

あっ河童だ! 意外な解決

「――このへんでいいかな」

文吾はそう呟きながら空缶を水面へ投げた。

空缶はゆらゆら揺れながら漂ってゆく。ランチはその空缶へ、探照灯の光をあてたまま、静かにそこから遠ざかりはじめた。

あっ河童だ! 意外な解決

文吾はランチの舳先へ立ちあがった。

透明な液の入っている壜をいくつか手に持ち、じっと空缶を睨んでいる。――社長も、良子も、胸苦しそうな表情で文吾がなにをするかと見まもっていた。

空缶は探照灯の光を浴びて、しばらくゆらゆらゆれていたが、そのうちにふいと、波の下から青黒い手が、あの蹼のある手が現われた。

「あっ、河童の手だ!」と叫ぶ間にその手は空缶をつかんだ。

刹那!

「――やっ」と云うと文吾は、壜のひとつを力まかせにその海面へたたきつけた。

轟然!

凄まじい波の爆発! ニトログリセリンである。文吾はつづけさまに、持っている壜をたたきつけた。それは空缶のあった海面を中心にして、円を描くように次々と大爆発を起した。――波は奔騰し、沸きかえり、附近一たいは揉みかえす海水で、石鹸を溶いてぶちまけたように泡だち狂った。

「ランチをつっこめ!」

文吾の命令に、ランチは泡だつ海面へ突進した。