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すいちゅうのかいじん

水中の怪人

山本 周五郎

「少年少女譚海」博文館、1939(昭和14)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,922 字 · 18 页

青空文庫

「あっ河童、あそこに河童が」

「こっちにも浮いた」「河童だ、河童だ」

ランチの上の人々は恐怖の叫びをあげた。

見よ、探照灯で照された海面へ、異形な怪物がぽかりぽかりと浮き上ってくる。蒼黒くぬるぬる光る体、鰭のような物のついている尖った頭、蹼のある手足、……爆発の勢で自由を失ったのであろう、海面へ浮上ったまま苦しそうにもがいている。

「ランチへあげろ」文吾が大声に叫んだ。

若い二人の社員は、その言葉に励まされたか、ランチが近づくと力をあわせて河童を引きあげた。全部で四人いた。

引きあげてみると蒼黒いぬるぬるしたものは、強い護謨引きの布であった。頭のうしろや背中や、手足の一部などに鰭のようなものが附いている。指のあいだに蹼がある。そして尖った頭は、その布の下に、軽金属の兜をかぶっているのであった。

文吾は手早く小刀を取りだすと右手に空缶をつかんでいる一人の胸へ当てて、蒼黒い布をさっと引きさいた。そして兜をぬがせた。

「まあ、あの人だわ!」良子が叫んだ。

「――津川だ」社長も息を引くように云った。――それは、「葵丸」の甲板で話しかけたあの職工服の青年であった。