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かわあかり
河明り
岡本 かの子
「中央公論」1939(昭和14)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,244 字 · 98 页
と寛いだ様子を出来るだけ示したので、女たちは、「じゃ、まず、一ぷくさせて頂いて……」と袂からキルク口の莨を出して、煙を内端に吹きながら話した。
今までいた宴会の趣旨の船の新造卸しから連想するためか、水の上の人々が酒楼に上ったときの話が多かった。
船に乗りつけている人々はどんなに気取っても歩きつきで判るのである。畳の上ではそれほどでもないが、廊下のような板敷きへかかると船の傾きを踏み試めすような蛙股の癖が出て、踏み締め、踏み締め、身体の平定を衡って行くからである。一座の中でひどく酔った連れの一人が洗面所へ行ったが、その帰りに料亭の複雑な部屋のどこかへ紛れ込んで、探しても判らなかった。すると他の連中は、その連れの一人が乗組んでいる船の名を声を揃えて呼んだ。
「福神丸やーイ」
すると、「おーい」と返事があって、紛れた客があらぬ方からひょっこり現れた。
ある一軒の料亭で船乗りの宴会があった。少し酔って来るとみな料理が不味いと云い出した。苦笑した料理方が、次から出す料理には椀にも焼ものにも塩一つまみずつ投げ入れて出した。すると客はだいぶ美味しくなったといった。