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きえたミジアム

消えた霊媒女

大倉 燁子

「オール讀物 四巻一一号」文芸春秋、1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 页

青空文庫

勝田さんは自分の言葉に昂奮していました。こんな話の聞き相手には私のような女がよかったのかも知れません。いつとなしに二人は親しい間柄になって行きました。

こういう熱帯国の常として、日中は皆昼寝をしますから、焼けつくような太陽の光が大地に輝いている午後の一時二時頃になると、まるで真夜中の静けさです。しかし不眠症の勝田さんが、この明るい真昼に眠れる訳がありません。で、午後になると必ず私のところへ訪ねて来るのを日課のようにしていました。

何事にも神経質な勝田さんは、天井から守宮が落ちてくるのを怖れて、いつもヴェランダにあるモスキトー・ハウスの中へ入って、そこで私を相手に雑談をするのでした。ところがその恐ろしい守宮がよくまた勝田さんの首筋に落ちかかったり、知らずに扉のハンドルと一緒に守宮を握ったりして、その冷やりとした、柔かい感じが、何とも云えず心持が悪いと云って、夢中になって手を洗うものですから掌が真赤になってしまったことさえあります。その時、気の毒に思って、

『ほんとに無気味な冷たさですわね。何だか死人にでも触ってるような感じでしょう?』

慰めるつもりで云ったのが、勝田さんにはどう響いたか、酷く不機嫌な顔付になって、そのままぷいと挨拶もせずに帰って往きました。