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しんやのきゃく

深夜の客

大倉 燁子

「モダン日本 九巻一三号」1938(昭和13)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,926 字 · 28 页

青空文庫

――ウム、この野郎、やったな! 血迷うな、僕に何の恨みが――、僕を殺してどうするんだ※(疑問符感嘆符、1-8-77) あれッ、あなた! ひ、ひと殺し、ヒェッ、あなた助け――」

言葉に交る烈しい雑音、それはその場の光景を物語るように聞えた。文句はそこで途切れ、あとはまるで闇の中に沈んでゆくような無気味な沈黙の中に、針の廻る音のみが物淋しく聞えていた。

洋子はぞっとして、

「これだけ立派な証拠があったのに――」と、歓声をもらした。

「先生、では、どうぞ、お願いいたします。私は死刑囚の依頼をやっと今日果し得たかと思うと、胸がすくようです。――脱獄をやったからにはまた罪が重くなりましょう。が、私の心の荷は軽くなりました。どうぞ、美和子さんの将来もお願いいたします」

「承知いたしました」

暁の霜を踏んで、深夜の客はどこともなく姿を晦した。