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しんやのきゃく

深夜の客

大倉 燁子

「モダン日本 九巻一三号」1938(昭和13)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,926 字 · 28 页

青空文庫

美和子が抜き取ったという短刀は床の上に投げ出されてあった。

「警察へお知らせになりましたか?」

「いいえ、まだ――、だって、誰も居りませんの。私一人きりで――、どうしたらいいかと途方に暮れているとベルが鳴ったので、竦んでしまいました。泥棒がまた来たのかと思ったもんですから、恐くって――、とてもお玄関へ出られませんでしたの。――でも、ほんとに嬉しゅうございました、先生がいらして下すって、私は助かりましたわ」

「お女中さんは?」

「町へ買物に参りました。もう帰るだろうと思いますけれど――」

何も知らないこととは云え、短刀には美和子の指紋が着いたであろうし、偶然ではあろうが、女中は買物に出掛けて不在、家の中には美和子一人しかいなかったとなると、その結果はどういう事になるのだろう。犯人が証拠でも残して去ってくれない限り、嫌疑のかかるのは当然だった。

洋子は第一にそれが心配になった。しかし、美和子はそんな事よりも、父が殺害されたという事で気が顛倒しているらしく、洋子が警察へ知らせに行こうと云うと、慌てて引き止め、

「先生、どこへもいらっしゃらないで――、どうぞ、私の傍にいらして下さいませ。