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はなかみろうにん

濞かみ浪人

吉川 英治

「サンデー毎日 新春特別号」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,425 字 · 39 页

青空文庫

半年過ぎ、一年経った。

織田雄之助は、友達へも、

(お千賀どのを、妻に娶う)と、かなり前披露してしまったし、庄左衛門もつい当座の嘘に嘘がかさんで、退っぴきならない板挾みになってしまった。

結局、その嘘は皆、親父が頑迷で、この結婚を理解しない――というせいに帰着させて、庄左衛門は近頃、雄之助を避け初めたので、物質的な損害もうけている雄之助としては、

(父子共謀のうえに相違ない)

と怒って、ひどく一閑を怨み初めた。

それでもまだ、お千賀の意志に、多分な頼みを残して、留守を窺っては、二、三度訪れたが、お千賀もふるえ上っているので、その三度とも玄関で追い帰したので、

(よしっ、その分ならば、一閑の出先へ行って、今夜こそ、俺の一分を立ててみせる。後で嘆くな)

と、最後の捨言葉を吐いて、千鳥庵の運座の帰りを待ちうけていたか、或はそこへ行く摺れ交いに、先夜の暴行をかっとしてやったものだった。

『――まあよかった。あれでもう来まい』

一閑は、そう云って、ひどく肩の荷を下ろしたつもりでいた。もちろん彼としては、織田家に借も貸もないつもりであるから。そして、

『数右衛門、又来いよ』