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はなかみろうにん
濞かみ浪人
吉川 英治
「サンデー毎日 新春特別号」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,425 字 · 39 页
最初の女
じっと、話しもしないで、それで退屈そうでもない人々が、彼にはふしぎだった。
――柿紅葉
――新酒
――後の月
そんな席題が貼り出されてある。何の事か、彼には分らなかった。大高源吾の句が読みあげられると、子葉という名で答えたので、
(ははあ、子葉という俳号を持っているのか)
と、数右衛門は初めて知った程だった。彼の前にも、紙と筆が配られてあったが、元より句など作れもしなかったし、作ろうとも思わない。そのうちに欠伸が出てならないので、肱掛窓に倚って、大川の夜空を見ながら、無意識に鼻糞をほじっていた。
最初の女
運座の帰り途である。
『まだ御存じはあるまい。こちらは、一閑殿と申されて、同藩の小山田庄左衛門殿の御厳父ですよ』
と、大高子葉に紹介わされて、
『わたくしが、不破数右衛門でござる』
と、途々、挨拶を交しながら、三人で連れになった。
小豆色の十徳に、投げ頭巾をかぶり、袖口から小田原挑灯をぶらさげて一閑は歩いている。人品のいい、肯かない気性の老人に思われた。
『御子息は、まだお独りですかな?』
何かの話から、子葉が云うと、老人は尖った肩を振って、
『さて、彼奴がの、いつになったら、女房でも持つ気になるか。