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ひのとり
火の鳥
「愛と美について」竹村書房、1939(昭和14)年5月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,740 字 · 76 页
深海の底というものは、きっとこんなであろう、と思った。さちよが、小学校を卒業したとしに、父は、ふたたび隣りのまちの女学校に復職した。さちよの学費を得るためであった。さちよは、父のつとめているその女学校に受験して合格した。はじめ、父とふたり、父の実家に寄宿して、毎朝一緒に登校していたのであるが、それでは教育者として、ていさいが悪いのではないか、と父の実家のものが言い出し、弱気の父は、それもそうだ、と一も二もなく賛成して、さちよは、その女学校の寮にいれられた。母は、ひとり山の中の家に残って、くらしていた。女学生たちに、さちよの父は、ウリという名で呼ばれて、あまり尊敬されては、いなかった。さちよは、おナスと呼ばれていた。ウリの蔓になったナスビというわけであった。事実、さちよは、色が黒かった。自分でも、ひどくぶ器量だと信じていた。私は醜いから、心がけだけでも、よくしなければならない、と一生懸命、努力していた。いつも、組長であった。図画を除いては、すべて九十点以上であった。図画は、六十点、ときたま七十三点なぞということもあった。気弱な父の採点である。
さちよが、四年生の秋、父はさちよのコスモスの写生に、めずらしく「優」