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かそうこくふうけい
火葬国風景
海野 十三
「帝都日日新聞」1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,334 字 · 37 页
こんどはブルブルブリブリと激しい音響をたてるものだった。彼はそれを子守唄の代りにして、グウグウ眠った。グーッと浮き上るかと思えば、ドーンと奈落へ墜ちる。その激しい上下も、いまとなっては、彼を睡らせる揺籃として役立つばかりだった。
十時間――ではあるまい、恐らく数十時間後であろう。八十助の棺桶は、遂に搬ばれるところまで搬ばれたようである。俄に周囲が騒々しくなった。汽笛が鳴る。音楽が聞える。花火が上る。一体之は何ごとが始まったのであろうか。
嵐のような歓呼とでも云いたい喧騒の中をくぐりぬけて、最後に彼の棺桶は、たいへん静かな一室に入れられた。
そのとき、またボソボソ云う話声が、棺桶のそばに近づいた。
「じゃいよいよ出すかネ」
「うん、出し給え」
「では一宮先生、とりかかってよろしゅうございますか」
「うむ。始めイ……」
ゴソリゴソリと綱らしいものを解く音、それからカンカンと釘をぬくらしい音が続いて起った。いよいよ棺桶から出る時が来たのだ。さていかなる場所へ着いたのかしら。それにしても一宮先生とは、どこかで聞いた名前だと、八十助はしきりに棺の中で首を振った。
火葬国