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かそうこくふうけい

火葬国風景

海野 十三

「帝都日日新聞」1935(昭和10)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,334 字 · 37 页

青空文庫

これをもっと徹底させると、どういうことになるか。それは人間が戸籍面からハッキリ姿を消すことになる!」

「ふふン」と八十助は呻った。

「つまり自分の死亡届けを出して置いて、自分は鬼籍に入る。そうなれば、この世でのいろいろの厭なきずなを断つことが出来る。もう借金とりも来なければ、大勢の子供の面倒を見なくてもよいし、年寄りになれば、老いぼれと蔑まれなくてもいい。鬼籍に入った上で、本当の生命の残りを、極めて自由に有意義に使うなら、こんな愉快なことは、無かろうじゃないか。――それがそもそもこの火葬国の起源であるというわけだ」

鼠谷仙四郎の醜怪な頬には、ぽッと紅の色がさし昇って来た。

白煙に還る

鼠谷仙四郎の饒舌はつづく。

「僕は花山火葬場に長く勤めているうちに、火葬炉に特別の仕掛けを作ることを考え出した。早く云えばインチキ火葬だ。誰でも棺桶を抛り込んで封印をしてしまえば、それで安心をする。しかし封印をしたのは表口だけのことだ。封印をしてないところが上下左右と奥との五つの壁だ。一見それは耐火煉瓦なぞで築きあげ、行き止まりらしく見える。誰一人として、あの五つの壁を仔細に検べようと思った者はない。