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むほうもの
無法者
豊島 与志雄
「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页
反応は種々様々だった。
顔を真紅にして俯向いてしまう女もあった。
怒ったようにそっぽを向く女もあった。
ほほほと笑殺する女もあった。
「どうぞ、お伴させて頂きますわ。」と揶揄するように言う女もあった。
それだけで、志村は顔を挙げて反り身になり、素知らぬ風に煙草を吹かした。なんだか憂欝そうでもあった。心持ち眉根を寄せてることもあった。
実際に、何日の何時頃と、彼が誰かを誘ったことは、勿論機微に属する事柄ではあるが、一度もなかったらしい。
彼の「内緒話」を側で漏れ聞いた武原は、或る時、彼と二人きりで街路を歩いていた折、ふと尋ねてみた。
「フグの茶漬けとかいうものを、君は言ってたことがあるが、ほんとうにあるのかい。」
「あり得るね。」と志村は答えた。
「え、あり得る……。」
「鯛茶があり、シビ茶がある以上、フグ茶だってあってもいいさ。」
「勿論、あって悪いわけはない。食いに行こうか。」
志村はじっと武原の顔を見た。そしてまた歩き出した。
「男同士じゃ意味ないよ。」
武原はその言葉の意味が分らず、黙っていた。暫くして、志村はぽつりと言った。
「フグ茶だとか、割烹旅館とか、あんなものは、単に僕の意思表示の道具に過ぎないんだ。