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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
(そう。ほんとうに、力なしの、弱虫なの、じゃあ、あたしが、これから加勢してあげるわ)
(いやいや、めっそうもない。房ちゃんは、僕なんかに、かまわないがいい)
そういって、曾呂利青年は、足がわるいのに、一番高い上段の寝台へのぼり、もう息をひきとりそうな老犬のように、小さくなって、寝てしまうのだった。
夕暮の空の下では、房枝は、一時、両親を恋うるセンチメンタルな可憐な少女にかわるが、ふだんは、すさまじい世渡りにきたえられて、十五歳の少女とは見えないほど、きびきびした少女だった。
房枝は、松葉杖をついた曾呂利のあとから、三等食堂の中へ入っていった。
ひろい食堂は、電灯も明るく、食慾のさかんな三等船客が、もう一ぱい、つめかけていた。皿やナイフの音が、かしましくするだけで、だれも、むだ口をきく者がなく、一生けんめいに皿の中のものを、胃袋へつめこんでいた。
トラ十も、さかんにぱくついているので、曾呂利青年や房枝の入ってきたのも知らぬげであった。
「おい、ソースだ、ソースだ。ソースのびんがないぞ」
トラ十が、たくましいこえで、どなった。
「ソースのびんは、目の前にあるじゃないか」