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ねこはち

猫八

岩野 泡鳴

「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页

青空文庫

五

と、主人は答えた。

五

「それはそうと」と、これまで厭な奴だと思われた天神さまが、この時いいことを尋ねてくれた。「君がそういうことをするようになった動機を聴きたい、ね」

「動機と申しますと――?」

「まア、言ってみれば、初まりの思いつき、さ」

「なるほど、な。――わたくしはこれでも初めから百姓、いや、ドン芸人じゃアございません。もっとも、どなたでもそうでしょうが」と洒落てから、自分にも思い出の多い昔を語った。自分は片手片足が利かなくなってから、女房とも相談して飴屋になった。が、ただ唐人笛を吹いてひょこりひょこり歩いてるのでは、どんな鼻垂れ小僧でも買ってくれようはずがなかった。最初の日はまるでゼロであったが、二日目にやッと十銭分だけ売れた。その銀貨一つを子供に喜ばせかたがた預けておいたら、子供のことだから、それを橋の欄干に置き棄てて遊んでる間に他の子供に取られてしまった。三日目にも商売に出たは出たものの、こんなことではとてもだめだと失望して、かの吉原土堤の上に足を投げだして、ぼんやり考えこんでいた。「ここでわたくしは天来の思想を得て、他日芸人になる素養ができましたのでげすが」