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ねこはち
猫八
岩野 泡鳴
「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页
、それから子供の集まってるところへ行ってその真似をしてみせると、案外によく飴が売れた。そしてその翌日からはかわずの飴屋がどこへ行っても待ち設けられた。
「先生、飴というものはなかなか儲かるものでげして、わずか五銭のもと手でその時三十銭から四十銭にはなりました」
「そんなにいい儲け口を止めてしまったのには?」
「そりゃア、わたくしの道楽が嵩じましたのです、な。わたくしには物の啼き声を真似るのが持ち前に備わってたとでも申すのでしょうか? 何でも真似ます。いや、すべて啼く物で真似ができなけりゃア、できるまで研究いたします。お客さまのうちにはよく螢を啼けとか、疝気の虫を啼けとかいう註文が出ますが、それはわたくし以上の天才にもおそらくできますまい。わたくしとしては、今じゃア、猫の喧嘩や虫、鳥の啼き声では平凡になって、飛行器や自動車の真似もしなけりゃア追ッつきません」
「そりゃア、物真似にも油断があって」と、主人は言った、「その油断で多くのものは通俗化させられてしまう」
「そんなことでは君も」と、また天神さまが言った、「みすみす堕落するばかりじゃないか? それよりも、いッそ、今君が自分の経歴を語ったような具合いに、自然で飾り気がなく、寄席へ行ってもそのとおりしゃべったらどうや? その方がよほど自然でおもしろいやないか?」