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ねこはち

猫八

岩野 泡鳴

「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页

青空文庫

二

「そう」という返事は後ろに聴えていた。「ほんとにあなたは稼ぎ手よ!」

「………」なアに、金になるのかどうかは分らないのであるが、向うがいかにも自慢げに見えるようにあのからだを運んでるので、こちらもただ何か自慢してやりたくなって、今からさして行く所をお座敷と言ってみたのだ。

「でッぷりした女だ、な」と、高見さんは言った。

「どうして――あれでなかなか亭主にゃア可愛がられておりますからたまりませんや!」

「へい――?」

高見さんはまじめに聴いていたが、自分にはじつはそんなことは分ってないのであった。ただ冗談でありさえしたらよかったのだ。この人も案外話せないと思いながら、話題を転じた。

「なかなか暑いじゃアございませんか? この分じゃア、この梅雨は乾梅雨でげしょうか、な? 困ります、な」

「そりゃア、雨が降れば寄席の客あしも減じようから、な」

「お客の足なら、摺り小木にもなれでさア。わたくしはちッとばかり人の地面を借りて野菜を作っております。困るのアそれが、雨が降るべき時に降らないとうまく行きませんから、な」

二

こんなことを語ってるうちに、ある家の門をはいった。ここにもわずかばかりだが胡瓜の畑を作ってあるのが彼には奥床しかった。