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ねこはち

猫八

岩野 泡鳴

「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页

青空文庫

その家の二階へ上るにも、彼は変てこに尻をひょこひょこ曲げてでなければ上れなかった。けれども、自分の事を、

「今夜は珍らしいお客さんを一人連れてきた」と言って、高見さんが六七名の一座へ紹介してくれた時には、自分もいつもどおりお客に嬌えこんだ時のような誇りを感じた。「あとでひとつやってもらってもいいと思って――例の猫八です」

「こりゃアおもしろかろう」と叫ぶものもあった。

「例のは気に入りました、な、わたくしも多少は知られた芸人ですから。あなたがたのような偉い文士方の前へ出ましても、な、その、そうおじ気が出ないのは仕合せです」こう言ってじろりと一座を見わたすと、無邪気に笑ったものもあるし、別に感触を害しているようなものもないらしいので、こちらの洒落を皆寛大に理解してくれる人々だと分った。が、なお念のためにもッと分らせておくつもりで、「ただし前もってお断わりしておきますが、わたくしはリョウマチのために人様のようにはからだが利きません。したがって、こうわざと畏まってますように見えるのもそのためでげして、あながち諸君を怖がってるわけではございません」

「は、は、は」