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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
貴婦人の傾倒の理由は何であったでしょう。天主教の全にして一なる神の観念が、その時代の人々の精神に響いて行った行きかたは面白いことね、封建のかたまりかかりの時代の底流との照応で。信長は種子島を国内統一に利用し、坊主の勢力削減法としてジェスイストを扱いました。家光の時の島原の乱も、名将言行録の側からみると、又一種の興味がございますね。鼎の重みを問われるテストであったのね徳川にとっては。天草のくずれが日本の陶器の発達に一役買って居ります、生業として刀をすてて陶工となり平戸焼などはじめたのね。ザビエーやその他日本へ渡来した人々の個人としての宗教的情熱、ジェスイスト的激しさ、荒々しさ、そういうものは武家の何ぞというと生死にかかわった生活感情に不似合と思えなかったでしょうし、様式の華やかさ、やかましさも時代の形式尊重に合ったのでしょう。スペインをアラブから解放しつつ、その宗教即政治という堕落でスペインを疲弊させてしまったスペインのキリスト教団の功罪と、日本などへ来た個々人の偉さとのくいちがいも面白いことね。その人々が遙々東洋へ来たのはどんな心理の動機でしたろう。