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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
あなたの盲腸はずっと納って居りますか? 私はどうしても貴方の生きていらっしゃるうちは生きていたいから、荒療治はおやめです。島田で苦しいのを我慢しながら、お父さんの診察に来る裏の何とかいう髭を眺めていたら、心細くなって、一そ切って置こうと思ったのでしたが。
そういえば、お目にかかったとき、厚着していらっしゃるように見えたのですが、ちがうかしら。今年、もしお体の事情がすこしましであったら、そろそろ皮膚の抵抗力をつよめるようにしましょうね。
島田が、私の故郷のような感じになって、ときどきチサの和えものだの、新鮮な魚だのを思い出します。島田川の岸の景色も心にのこっている。お父さんは、私がのませると薬をあがり、ほかの人だと、ぶってこぼしてしまったりなさる。安着の電報に添えてチチウエ、オクスリヲヨクメシアガレとうったら、この頃お母さんや達ちゃんたち、閉口するとそれを護符のようにもち出す由。あなたからも、この薬をのむことと、お小便をとるための袋をおつけになることの必要をよく云ってあげて下さい。今日、この袋はお送りするのですが、おむつではどうしても不潔で細菌が犯し、膀胱カタルを猶悪化させますから。