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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

中央公論は月給を払うそうですが。見舞の手紙を出しておきました。可哀想に。考えかたは現実にまけて妙な風だけれども病気は可哀そうね。国男今夜は袴羽織で坐っているわけです。では又。どうぞお大切に。

[自注30]晨ちゃん――片上晨太郎。片上伸の長男。左翼的活動にも関係していたが、肺結核で戦争中信州追分にて死去。

九月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

九月十七日(十一日づけの次です)  第八十九信

机の上のタデの花は、部屋の空気でむされてしおれてしまって居りますが、私はパッチリやで上機嫌です。そのわけは、十月初旬迄の忙しい間も林町へはゆかず、ここにいられることになったからです。おミヤさんが、本田の家からこっちへかえって来て、ともかくその間いるように協定がつきましたから、林町と。午後来ました。おミヤさんというのは生来の愚善に、庶民のすれと消極とを身につけたひとで、可哀そうな老女ですが、一緒にいるのは平常の心持ではなかなか辛いのです。けれども今はそんなことにかまっては居られず、よろこんでいるという勝手な次第です。しかし私は、ここでともかく一人の人がいて、勉強出来てどの位うれしいかしれません。