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ばくおう

獏鸚

海野 十三

「新青年」博文館、1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,493 字 · 33 页

青空文庫

こうなれば、早く帆村に知らせてやるほかない。

「僕は今暫く玲子に見られたくないのだ」と帆村は深刻な表情をして云った。「しかし彼女が例の女に違いないということをもっと確かめたい。どこかで写真を見せて呉れないかしら」

「さあ、――」

「とてものことに、動いているやつ――つまり活動写真で見たいね。試写室はどうだろう」

試写室というわけにも行くまい。私は考えて、彼をフィルムの編集室へ連れてゆくのが一番簡単であり、そして自由が利くと思った。――それを云うと、帆村は満足げに、大きく肯いた。

フィルム編集室は、スタディオからかなり離れたところにあった。そこに働いている連中とは前々からよく知り合っていた。

「桐花さんのフィルムを映してみせてくれないか、この人が見たいというので……」

というと、木戸という編集員が出てきて、

「じゃあ、いま撮影中だけれど『銀座に芽ぐむ』の前半を見せましょうか」と気軽に引受けてくれた。

帆村と私とは、狭い編集用の試写室の中に入って黒いカーテンを下ろした。

「スタディオが出来て、録音がとてもよくなりましたよ……」

木戸氏は映写函の中から、私たちに自慢をした。