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げんだいのさじゅつ

現代の詐術

坂口 安吾

「個性 第一巻第一号」思索社、1947(昭和22)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,471 字 · 25 页

青空文庫

人は工人の座、パンパンはパンパン座、オカミサンは隣組座、みんなこれをやる。

キリストが原人的であるのに比べると、孔子はよほど社会人的であるけれども、徒党精神の味方ではない。

私も中世を好まない。中世よりも古代、原人の倫理を好み、中世に復帰するなら古代に、まず原人に復帰したいと考える。カミシモをぬぐなら、カミシモだけぬいで中世にとゞまるよりも、フンドシまでぬいで原人まで戻ろうというのが私の愛する方法だ。

私が未明の二時三時に行列して一個のタバコが買えなかったころ、隣組座の横暴もあったけれども、又一方には百個のタバコの五十個を店主が知人やオトクイに流すということも公然のことであった。然しこのころはタバコ屋はまだヤミをやってはいなかった。ヤミ値で売ってるわけではなく、知人への義理人情、オトクイへの義理人情、そういう性質のものであった。

戦争中はまだ旧秩序への復帰ということが前提されていたから、オトクイはやがて再びオトクイとなる、知人はやがて恩を返す、そういう未来への打算があったのであるが、今はもうオトクイは破産し、知人もヤミ屋となり、旧秩序への復帰の前提が失われたから、みんな中世の座をくんだり、野武士となったり、それぞれ中世の方式通りに活躍遊ばされておる、クモは生れながらにして巣をくむが、人間は戦争に負けると