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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

どんな偉い人物か見当もつかない悠々たる奥深さがある。目をつぶって、いかにも平和に正坐している。ほかの人々も目をつぶって坐っていた。

まもなくドッと音が起って、にわかに大部隊がのりこんで、神殿にあふれた。たゞ一瞬のことである。突如として、すでに奏楽が起った。白衣に緋の袴の鈴ふり女もいるが、横笛を吹いているのもいるし、琴をかきならすのもいる。チャルメラみたいな国籍不明の笛をふく白衣の男もいる。太鼓をうつのもいる。キキキッと悲鳴のような泣声をだす楽器もあるが、どれとも見当がつかないのである。

音楽がピタリと終って、白衣の男女は神殿の要所々々へ退いて、ジッと狙うように立っている。スワといえば躍りかかってノド笛へ食いつくような殺気立った鋭さで、マムシが鎌首を立てゝ隙をうかがっているとしか思われない。

祭壇の下に立っているのは、何者だか分らないが、正宗菊松はトンチャクしなかった。そんなものを見ようなどと不敬な心を起しては後々が大変である。平伏して、額をタタミにすりつけて、頭上には両手をすり合わせて、

「マニ妙光。マニ妙光。マニ妙光」

一心不乱である。

「コウーラッ。