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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
と、一方から大勢の者が、この四人の駕籠の方へ、群て歩いて来るのが見られた。
白河戸郷の方角から、その大勢の者は来るのであった。
洞窟の奥の神殿の前に佇んでいる男女があった。宮川茅野雄と浪江とであった。
神殿の扉がひらかれていて――開いたのは茅野雄その人なのであったが――内陣のご神体が見えていた。
六尺ぐらいの異国神の像で、左の一眼が鯖色の光を、燈明の火に反射させていた。
それだのにどうだろう、右の一眼は、盲いたままになっているではないか。眼窩は洞然と開いているが、眼球が失われているのである。
アラ神であるということは、多少とも回教を知っている人には、看取されたに相違ない。
そのアラ神を囲んでいる厨子が、宝石や貴金属や彫刻によって――アラビア風の彫刻によって――精巧に作られちりばめられてあり、厨子の前方燈明の燈に――その燈明の皿も脚も、黄金で作られているのであったが――照らされているありさまは、神々しいものの限りであった。
神殿は石段の上にあり、その石段もこの時代にあっては珍らしい大理石で作られていた。
しかし建物は神殿ばかりではなく、神殿から云えば東北の辺りに、二棟の建物が建ててあった。