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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
(小枝を奪い取って人質としよう。白河戸郷を苦しめるのに、上越す良策はない)
で、弦四郎は若者達へ云った。
「方々拙者に存じよりがあります。ここに待ち受けて小枝という娘を、奪い取ることにいたしましょう。さあさあ木陰へおかくれなされ」
で、弦四郎をはじめとして、丹生川平の若者達は、木陰に体をひそませて、小枝達の一行の近寄って来るのを、一団にかたまって待ち受けた。
そういう危険が待っているという、そういうことを小枝達が、どうして感付くことが出来よう。野花を摘みながら讃歌をうたい、歌いながら次第に林の方へ、浮き浮きとした様子で近寄って来た。
間もなく小枝達の一行は、林の前まで来ることであろう。
と、弦四郎達の一団が、踊り出て彼女達を襲うであろう。
その結果は知れている。
小枝は奪われるに相違ない。
しかるにこの頃一人の武士が、汚れ垢じみた旅姿で、曠野をこっちへ辿って来た。
他ならぬ宮川茅野雄であった。
輿を担いで来た二十人の、異様な樵夫のような人物達に、意外なことから襲われて、数人茅野雄は切りは切ったが、不覚にも崖を踏み外して、谷底深く落ち込んだのは、この日から十日前の深夜のことであった。