轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

とめさんとそのおんな

留さんとその女

山本 周五郎

「アサヒグラフ」 1935(昭和10)年9月4日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,799 字 · 14 页

青空文庫

予想していたにしろいなかったにしろ、その女を初めて見た者はひどく驚かされた。そんなにも醜い女が世の中にあるであろうか醜いのは器量だけではない、――なるほど牛のような肩をしている、手足の関節は木の瘤のように節くれ、留さんと負けず劣らず色が黒い、ぎょろりとした黄色い濁った眼はいつもいらいらと光る、頬骨が考えられぬほど張出してる、ひどい縮れ毛で額がぐんと抜け上ってる、金盥の底をかき廻すような声で、途方もなく喚きちらす――しかしそうしたことならほかに似た者がないわけではない、彼女の醜さはむしろもっと内面的のものなのだ。

ながいあいだの荒みきった生活が骨の髄まで浸みこんで、人間のもっている思い遣りとか、うるおいとか温かさというものがことごとく喪われている、彼女の感覚はつきつめたものだけにしか反応がない、彼女の言葉は氷のごとく刺し、火のように相手を焦がす、彼女の思想には黄昏も暁もなくて、いつも真夏の昼のごとくあからさまに、真夜中のごとく暗澹とした絶望しかなかった。彼女は掘尽された坑道を思わせる、干あがった廃井戸を思わせる――何もない、ひとたらしの血もないように見えるのだ。