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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页

青空文庫

から、弁天の祠まで往復十町あまりに過ぎないので、さのみの時間をも要しないがために、母も別にかれこれも言わなかったらしい。お照は昨夜も参詣に出て行って、こうした最期を遂げたのである。

清月亭は宵から三組ほどの客が落ち合っていたので、それにまぎれて初めのうちは気も付かなかったが、八時ごろになっても娘が帰って来ないので、母もすこしく不安を感じ出して、念のために雇人を見せにやると、弁天社内にお照のすがたは見えないと言って、一旦はむなしく帰って来た。いよいよ不安になって、心あたりを二、三軒聞きあわせた後に、今度は母が雇人を連れて再び弁天の祠へ探しに行ったが、娘の影はやはり見あたらなかった。彼女の死体はあくる朝になって初めて発見されたのであった。

その訴えに接して、わたしは一人の巡査とともに現場へ出張して、型のごとくにその死体を検視することになった。池は南にむかって日あたりのいいところにあるが、それでもここらのことであるから、岸のあたりはかなりに厚く凍っている。お照の死体は池のまん中に浮かんでいたというのであるが、私たちの出張したときには、もう岸の上に引揚げられて、しょせん無駄とは知りながら藁火などで温められていた。