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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
「冬坡君。どこへ行くのだ。」
彼はおびえたように立停まって、無言でわたしに挨拶した。冬坡は平生から温良の青年である。殊にわたしの俳句友達である。彼に対して職権を示そうなどとは勿論かんがえていないので、わたしは個人的に打解けて訊いた。
「君はおとといの晩、あの弁天池のところで何をしていたのかね。」
彼はだまっていた。
「君はスコープで何か掘っていたのじゃないかな。」と、わたしは畳みかけて訊いた。
「いいえ。」
「では、夜ふけにあすこへ行って、何をしていたのかな。」
彼はまた黙ってしまった。
「君はゆうべもあの池へ行ったかね。」
「いいえ。」
「なんでも正直に言ってくれないと困る。さもないと、わたしは職務上、君を引致しなければならないことになる。それは私も好まないことであるから、正直に話してくれ給え。ゆうべはともあれ、おとといの晩は何をしに行ったのだね。」
冬坡はやはり黙っているのである。こうなると、私も少しく語気を改めなければならなくなった。
「君はふだんに似合わず、ひどく強情だな。隠していると、君のためにならないぜ。実は警察の方では、清月亭のむすめは他殺と認めて、君にも疑いをかけているのだ。