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きけいのてんにょ
畸形の天女
江戸川 乱歩
「宝石 第八巻第十一号」1953(昭和28)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,893 字 · 35 页
してはいけないことになっているからね」
「どうしてなの? したいでしょう」
「したくもないね」
「つかまるとこわいからなの? そんなの、卑怯だわ。したいけれども怖いから、みんな我慢してるのね。あたいだって、ショーウィンドーにあるいろんなものが、盗みたいわ。でも、やっぱり怖いのよ。あたいも卑怯ものだわ。人間って、みんな卑怯ものだわ」
「君は面白いことをいうね。おとうさんは?」
「おとうさんがどうなの?」
「なんの商売だい?」
「靴屋」
「おかあさんもいるの? 兄弟は?」
「おかあさんも兄弟もいるわ。弟がふたりよ」
「きみ、楽しいかい、楽しく暮らしてるかい?」
「楽しいって、どういうこと? したいことを、みんな我慢しているのを、忘れること? そういう時もあるわ」
「きみ、おじさんが好きかい?」
「ちゃあんと知ってるくせに。すきよ」
ふたりはじっと眼を見合わせた。少女は恥じらっていなかったが、松永は妙に恥かしくなってきた。宮城社長がチラと心の隅に顔を出した。
しばらくだまっていてから、少女は突然立ちあがって、
「あたし、おどり好きよ。見せたげましょうか」
と言ったかと思うと、非常に可愛い顔になって、両手を腰にあて、尻をクネクネゆすりながら、見たこともない異様な踊りを踊った。