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きけいのてんにょ
畸形の天女
江戸川 乱歩
「宝石 第八巻第十一号」1953(昭和28)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,893 字 · 35 页
青年は相当酔っているようだった。
「きみは、ふみ子のなんだね?」
「なんでもない。まあ、兄弟みてえなもんだね。おじさん、ふみ子に逢うのを、止してくんないか」
「ふみ子には兄はなかったはずだ。なぜふみ子に逢っちゃいけないんだね」
「ちょっと、おじさんにはわからないわけがあるんだ。たのむから、あの子に手を出さないでくれ。よ、たのむからよう」
最初はつつもたせかと、ギクッとしたが、ふみ子は娼婦ではないのだし、つつもたせなんかするはずはない。このヨタモンは、ふみ子に惚れているのだ。ひょっとしたら、関係ができているのかもしれない。
「ウン、よし、よし、なるべく逢わないようにするよ。だがきみは、ふみ子の色なのかい。それで、こんなことを、おれにたのむのかい」
「そんな関係じゃねえ。だが、よしてもらいてえんだ。たのんだぜ。くれぐれもたのんだぜ」
「ウン、わかったよ」
青年は、松永をほそい眼でジロリと、気味わるく睨みつけておいて、どこかへ立ち去って行った。
この出来事が、一週間、心のひっかかりになっていた。あいつは、どうもふみ子と関係があるらしい。むろん現在ではない。その点は彼に自信があった。