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きけいのてんにょ
畸形の天女
江戸川 乱歩
「宝石 第八巻第十一号」1953(昭和28)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,893 字 · 35 页
少女のきゃしゃなからだは、彼の両腕の中で消えてしまいそうだった。甘い乾草の匂いがした。「逢いたかったわ、逢いたかったわ」淫蕩な声がささやいて、彼の唇を求めた。彼女のは、母の乳首のように、なめらかで、弾力があって、甘い唇だった。彼の方で離そうとしても、少女の唇はいつまでもはなれなかった。
「きみ、額に傷痕のある青年を知っているだろう。あれ誰だい?」
やっと息をついて言った。腕の中の少女のからだが、少し固くなった。
「おじさん、会ったの?」
「ウン、このあいだの帰りと、今くる道と、二度会ったよ」
少女はだまっていた。
「きみに惚れているから、おれに手を引けっていうんだよ。涙を流してたのんでたよ」
「まあ、いやな泣き虫。あいつ、あたいにも泣くのよ。きっとおじさんに言ったのと同じだわ。あたいにも、そういってたのむのよ」
「あいつ、おれのこと、どうしてわかったのだろう。この空き家を知っているの?」
「知るはずないわ。きっと、おじさんと手を引いて歩いているの、見られたんだわ」
「どこのやつだい」
「もと自転車屋に勤めてたけど、今、失業してるの。自転車屋にいるころから、あたいを好きだ好きだってついてくるのよ」