轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぎわく
疑惑
江戸川 乱歩
「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年9月15日、25日、10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 37 页
つまり、忘れてしまうのだが。忘れる、ということは、その慾望を全然無くしてしまうのではなくて、我々の心の奥底へとじ込めて、出られなくしたというに過ぎない。だから、僕達の心の底の暗闇には、浮かばれぬ慾望の亡霊が、ウヨウヨしている訳だ。そして少しでも隙があれば飛び出そう、飛び出そうと待構えている。我々が寝ている隙をうかがっては、夢の中へ色々な変装をしてのさばり出す。それが高じては、ヒステリーになり気違いにもなる。うまく行って昇華作用を経れば、大芸術ともなり、大事業ともなる。精神分析学の書物を一冊でも読めば、幽囚された慾望というものが、どんなに恐しい力を持っているかに一驚を喫するだろう。おれは、以前そんな事に興味を持って少しばかり読んだことがある。
その一派の学説に『物忘れの説』というものがあるのだ。分り切ったことをふと忘れて、どうしても思い出せない、俗に胴忘れという事があるね。あれが決して偶然でないというのだ。忘れるという以上は、必ずそこに理由がある。何か思い出しては都合の悪い訳があって、知らず知らずその記憶を無意識界へ幽囚しているのだという。いろいろ実例もあるが、たとえばこんな話がある。