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すかいさんきこう
皇海山紀行
木暮 理太郎
「山岳 一六の三」1923(大正12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,720 字 · 24 页
北風にしては温いと思ったのも道理、実は南風であったのだ。二度も殆んど直角に曲っておりながら、少しも気付かず直線に進行しているものと信じていることなどは、単に地図上で判断しては、到底了解されるものではない。
砥沢には宿屋はないが、飯場をしている吉田留吉という人の家で泊めてくれるとのことに、そこを尋ねて一泊頼むと快く応じてくれた。座敷に通ると火鉢や炬燵に火を山のように入れてもらって、濡れた物を乾しにかかった。身に着いていたもので濡れていないものは一つもなかった。風呂に入ってドテラに着換え、炬燵に寝ころんでやっと人心地がついた。二人とも著しく食慾が減退しているのに気が付く。昨夜ビスケットを少したべたまま、晩も朝も食わず、その上もう昼を過ぎている。それにもかかわらず膳に向って箸を取ると、汁の外は喉を通らぬ。やむなく生卵を二つばかり飲んで三食に代えた。よほど体に変調を来したものと見える。これで山登りが出来るかと心配になった。藤島君は若いだけに元気がよく、一、二杯は平げたようであった。
三時頃になって西の空が明るくなったと思うと、青空が現れて日がさして来た。