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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

お堀のきわへひたと取りついておりました。城内からはしきりに鉄炮を打ちましてそのへんのてきをみなごろしにいたしましたが、あらてのぐんぜいが入れ代り/\おしよせてまいりますのをひっしにふせぎましたことゝて、なか/\けんごに持ちこたえまして、この様子では左右なくやぶられそうもござりませなんだ。そんなぐあいでその日はどちらも手負い死人を出しまして引きとりましたところ、あくる廿三日のあかつき、寄せ手の陣がきゅうに攻めつゞみのおとをひかえてひっそりいたしましたので、何かとおもっておりますと、お堀のむこうに五六騎の武者があらわれまして、「御子息しばた権六どの、ならびにさくまげんばどのを昨夜いけどりにいたしました、おいたわしい儀でござる」とだいおんに呼ばわりましたので、おしろではそれをきくとひとしくみなさまがちからをおとされ、そのゝちはたゞ申しわけに御門をかためておりますばかりで、てっぽうなどもはか/″\しくは打ちませなんだ。わたくし、じつは、そのうちにひでよし公よりなんとかお使いがありはせぬか、おくがたのことをいまもおもっていらっしゃるなら、きっと、きっと、どなたかお人がみえそうなものだがと、ない/\それにのぞみをつないでおりました