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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
わたくし、じつに、このとしになりますまで、ながねんのあいだもみりょうじを渡世にいたし、おわかいお女中さまがたをかずしれず手がけてまいりましたが、あれほどしなやかなからだのおかたをいろうたことがござりませぬ。それに、おんはだえのなめらかさ、こまかさ、お手でもおみあしでもしっとり露をふくんだようなねばりを持っていらしったのは、あれこそまことに玉の肌と申すものでござりましょうか。おぐしなども、お産をしてからめっきりと薄うなったと、ごじゝんでは仰っしゃっていらっしゃいましたが、それでもふさ/\とうしろに垂らしていらっしゃるのが、普通のひとにくらべたらうっとうしいくらいたくさんにおありになって、一本々々きぬいとをならべたような、細い、くせのない、どっしりとおもい毛のたばが、さら/\と衣にすれながらお背なかいちめんにひろがっておりまして、お肩を揉むのにじゃまになるほどでござりました。なれども、このとうとい上のおみのうえもおしろがらくじょうするときはどうなるだろうか。このたまのおんはだえも、たけなすくろかみも、かぼそいほねをつゝんでいるやわらかい