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つぶてしんじゅう
礫心中
野村 胡堂
「富士」1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,190 字 · 28 页
「…………」
惣兵衛は驚き呆れる娘の手から太刀を奪い取って鞘に納め乍ら、一生懸命に斯う続けるのでした。
「私の父親の惣五郎は、水野様御先代が肥前唐津に御在城の頃、御出入をしたことのある身分だ、水野様には海山の御恩こそあれ、毛程の怨も無い、今度も鳥居甲斐守の御指金で危く打首にもなるところを、殿様の御言葉一つで助かった私だ、――神様のような越前守様を、夢にも怨んではならぬ、お前の姉の仇は鳥居甲斐守様だ――」
「父さん」
「お豊お詫を申上げろ、要次郎も降りて来い、何んと言う無法なことをするのだ」
老人はお豊の頭を大地に押えて、樹の上の要次郎を叱り飛ばしたのでした。
此場の様子を、涙ぐましく眺めて居た越前守は、何やら物を言い度げに二三歩進みます。
が、丁度其時、思いも寄らぬ大事件が、水野家門前へ展開したのでした。
罵りわめく声、物を投る音、――それは一陣の風のように、近づいて来るのです。
「あれは何んだ」
越前守の顔色もさすがに変りました。
「殿、大事出来」
堺藤兵衛は木の間を駈けて来ると、越前守の前に手を突きました。
「何事じゃ」
「殿、御老中罷免と洩れ聞き、あの通り暴民共が押し寄せました」