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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

在线阅读国枝 史郎《神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 188,242 字 · 380 页

青空文庫

左の下眼瞼に小指ほどの、大きな泣き黒子が附いているので、一層その顔は悲しそうに見えた。

心経寺の宿へかかった頃、行手から鉦の音が聞こえて来た。つづいてご詠歌の声がした。と一群の行列が、辻を廻わって現われた。眼の所へだけ穴を穿けた、木綿の白布を顔へ垂れた、それは癩人の行列であった。

二人の片輪者と癩人とが、往来の上で邂逅った時、癩人の方で道を避けた。そんなにも二人の片輪者は、恐ろしく気味悪く見えたのであった。

鍛冶屋街道は飛び飛びに、幾個かの宿場や村を繋ぎ、ウネウネと甲府まで続いていた。もう菜の花は散っていたが、街道の左右の耕地では、麦の葉が微風に戦いでいた。耕地が尽きると丘になり、丘を巡ると林になり、林を抜けると森になり、さらに幾個かの峠となり、河を渡らなければならなかった。

そこを二人は歩いて行った。

白井河原へはいった頃には、永いものの例にされている、春の日も暮れて夜となり、下鍛冶屋宿、上鍛冶屋宿、住吉、畔、高台寺、甲府の城下へはいった頃には、一番鶏の啼くほどの、深い夜となっていた。

依然甲府は火柱の主と、癩人と血吸鬼との巣窟であった。

闇の夜空へ聳えているのは馬場美濃守の大屋敷で、ポッツリ一つ大きな星が、低く屋根棟に懸かっていた。