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かみだな

神棚

豊島 与志雄

「新潮」1923(大正12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,427 字 · 44 页

青空文庫

玩具買うお金があったら、お米でも買ってくりゃあまだ気が利いてるのに……。今頃までほっつき歩いてて、よく手ぶらで帰って来られたもんだね。傘を借りてくる所もないと見えて、雨にまで濡れてさ……。」

なるほど彼女の言葉は、俺の痛い所へ触れていった。着物がしめっぽくなってることや、口実に玩具を買ってきたことや、当もなくぶらついたことなどを、ちゃんと見通したような口の利き方をしていた。けれど、彼女の心に映るのは、ただそんなことだけで、それから一重奥のことは、全く分らないのだ、と思いながら俺は云った。

「なあに、今にサンタクロースの爺さんが、どんな仕合せを持ってきてくれねえとも限らないさ。」

「何を云ってるんだよ、毛唐の爺さんと福の神とを間違えてさ!……またいつもの、お金を拾う夢でもみたんだろう。」

俺は苦笑して何とも答えなかった。湿っぽい一張羅をぬいで、木綿の平素着と代えながら、冗談にまぎらして云った。

「早く飯にしてくれないか。腹が空ききってるんだ、昼飯を食うのを忘れたもんだから。」

「え、昼飯も食べないでいるの!」

同情したのか軽蔑したのか分らない調子だったが――恐らく両方だったろうが――兎に角彼女はすぐに食事にしてくれた。