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ふくざわせんせいのしょせいしゅぎとわがはいのしょせいしゅぎ

福沢先生の処世主義と我輩の処世主義

大隈 重信

「実業之世界 第五巻第一号」1908(明治41)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,054 字 · 11 页

青空文庫

向うが太いことをいう、此方も太い事をいうのだから、勢い衝突するにきまっている。その頃我輩は偉い権力のある役人で、その上書生気風が抜けておらぬから図太い事をいう。福沢諭吉もまた偉そうな事をいって、役人などは詰らぬ人間のようにいう。両方で小癪に触るので一時は衝突しておったものだ。ところが明治六年であったと思う。上野の天王寺辺の薩摩人の宅で落ち逢うことになった。というのは先生と我輩とは以上の如く犬猿の間柄で、一方は民間学者の暴れ者、一方は役人の暴れ者、これを噛み合してみたら面白かろうというので、いわば悪戯者どもが、芝居見物の格で我々を引き合したものだ。それを知らずに我輩が出掛ける。先生もまた知らずに出掛けて来たらしい。妙な人物がいると思ったろうよ。その時我輩は三十五、六、先生は四十になるかならぬかだ。これは福沢だ、これは大隈だというので引き合されて名乗りあって、不思議な所で初対面が済んだが、漸々話し込んでみると元来傾向が同じであったものだから犬猿どころか存外話が合うので、喧嘩は廃そう、むしろ一緒にやろうじゃないかという訳になって、爾後大分心易くなった。