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ねぎさまみやた
禰宜様宮田
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页
の逃げて行き方が、もっと早く、もっとひどく行われたのである。年寄りはあんな大男の息子を助けた男というだけで、もっとずーッと体も心もがっしりした元気な男を期待していたところへ現われた彼は、余りすべてにおいて思いがけない。
おばあさんは、何だか滑稽なような、お礼を云うのも馬鹿らしいような気持になってしまった。
そして、臆している彼の前にこの上ない優越感を抱きながら、お礼を云うのか命令しているのか、さほどの区別をつけられないような口調で息子の救われた感謝の意を述べた。
私のようなものが、お前にお礼を云うのさえ、ほんとなら有難すぎることなのだという口吻が、ありありと言葉の端々に現われているけれども、禰宜様宮田はちっとも不当な態度だと思わなかったのみならず、彼女がほのめかす通り、お礼などを云われるのはもったいないことだと思っていたのである。
お前さまは海老屋の御隠居であらっしゃる。そんにはあ俺あこげえな百姓づれだ。そこにもう絶対的な或るもの――禰宜様宮田にとってはこの上ない畏怖となって感じられた、両者の位置の懸隔――を認めることに、馴されきっているのである。