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ねぎさまみやた

禰宜様宮田

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页

青空文庫

何を云われても、彼はただハイ、ハイとお辞儀ばかりをした。

一通り云うだけのことを云うと、年寄りはもったいぶった様子で、仰々しい金包みを出した。

麗々と水引までかかっている包みを見ながら、禰宜様宮田は、途方に暮れたような心持になりながら、ぎごちない言葉で辞退した。

「ほんにはあお有難うござりやすけんど……

俺ら心にすみましねえから……」

けれども年寄りの方では、喉から手が出そうに欲しくても、一度は「やってみる」遠慮だと思ったので、唇の先だけで、

「まあ御遠慮は無用だよ」

と云いながら、煙草を吸い込む度に目を細くしては彼の様子を見ていた。

が、彼はどうしても納めようとしない。

貰わない訳を彼は説明したかったのだ。けれども、何より肝腎の、

「俺の心にすまんねえもの」

を、云いとくに入用だけの言葉数さえ知らない上に、どういう訳だからどうなって俺の心に済まないのかと、いうことは、彼自身にさえよくは分っていない。

ただ心に済まない気がする。後にも先にもそれだけなのである。けれども、その漠然とした「気持」が、どんなにしてもごまかせもせず、許せもしない強さで彼の心を支配しているのである。