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ねぎさまみやた

禰宜様宮田

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页

青空文庫

息もつけない恐怖である。逼迫である。

愚痴を並べ、苦情を云っていられるうちは、貧乏の部には入らないという、そのほんとの「空虚」が来たのである。

空虚な俺等……。

蓄わえた穀物はなくなるのに、何を買う金もない。何で親子五人の命をつないで行ったらいいのだろう?

そこへ、海老屋ではまたも難題を持ちかけて来た。

一俵の米もよこされない。それじゃあすまないから、今まで貸してやっていた金を、暮まで待つから全部返済しろと云うのである。

食うや食わずで、たださえ生きるか死ぬかの今、無断で一割の利まで加えた百円以上のものを、どうして返せるだろう。

金で返せない? それなら仕方がない、土地を差押えるぞ!

これが海老屋の年寄りの奥の手であった。

最初からこうまでするように、彼女の妙法様はお指図下すったのである。

現在海老屋の所有となっている広大な土地は、全部こういう風な詭計を用いて奪ったのだと云うことは、決して単にそねみ半分の悪口ばかりだとはいえない。

そんなことをするに、ちっとも可哀そうだとも、恥かしいとも思わないだけ、充分に彼女の心は強かったのである。

そして、またその驚くべき強い心に、この上ない誇りを感じている彼女は、何も自分の持っている力を引込ませて置く必要は認めなかった。