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ねぎさまみやた
禰宜様宮田
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页
何のために虎は、あんな牙を持っているかね、弱い人間や獣を食うためじゃあないか、私の生れつきだってそれと同じなのだ。それでもうすっかり彼女は安んじていられたのである。
今度も彼女は、自分の天稟に我ながら満足しずにはいられなかった。
もうここまで漕ぎ付ければ、後はひとりでに自分の懐に入って来るほかないいくらかの土地を思うと、優勝の戦士がやがて来る月桂冠を待つときのような心持にならざるを得なかった。
比類ない自分の精力と手腕をもってすれば、こんな相手を斃したことは、むしろ当然というべきではある。
が、嬉しい。この上なく張合がある。
土地や金が、ただ「殖える」とか「広くなる」とかいう、そんなやにっこい言葉で彼女の快感は表わせないほど、熾んなのであった。
彼女は、しんから自分自身の生命の栄えを讃美しながら、次の対照の現われを強い自信と名誉をもって待っていたのである。
が、禰宜様宮田は……。
憤るには、彼等はあまり疲弊していた。
海老屋から使がその趣を伝えて来たときでも、彼等夫婦はまるで他人のことのように、ぼんやりした、平気な顔をして聞いていた。
何だかもう、頭の中が真暗になって、感じも何も皆どこへか行ってしまったような心の状態になっていたのである。