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しゅうさいようしかがみ
秀才養子鑑
佐々木 邦
「現代」大日本雄辯會講談社、1939(昭和14)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,837 字 · 32 页
同時に自信がある。東京にいても自分ぐらい綺麗な人は尠いのだから、この山の中では天下無敵だろうと思っている。
井上君の社宅は大きかった。役がついていると違う。客間の椅子テーブルも社長の本邸から取寄せたらしく、本式のものばかりだった。
「時に小室君、僕は昨日商大の名簿を見て、君の旧姓を発見しましたよ。括弧の中に書いてありました」
と井上君は小室君を安楽椅子に寛ろがせると直ぐにやり出した。
「旧姓玉木です」
「養子ですね? 君は」
「はあ」
「僕は御承知の通り女婿ですから、養子も同じようなものです。女房のお蔭で出世するように、兎角誤解される部類ですから、何分宜しく願います」
「僕こそ何うぞ宜しく」
「実は僕達は世間の蒙を啓く為めに会をやっているんです。橘会、又の名袖の香組といって、養子又は女婿が会員です」
「はゝあ」
と小室君は初耳らしく傾聴した。
「養子女婿だから出世するのか? 元来秀才で出世する資格があるから養子女婿に物色されるのか? これは考えるまでもないことでしょう。養子女婿は選ばれた人種です。選民です。優秀だから懇望されるんです」
「成程。一理ありますな」
「何だ? 君。