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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

13 黒白帖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 页

青空文庫

あるいは年を越えるかもわかりませぬが、まずは第一報までを、この地から」と。

顕家の若い眉と共に全軍は“士気天ニ冲ス”の概だった。ゆらい、中央の官軍はいたずらに官爵を誇って老いやすかったが、みちのくの官軍は若かった。純で情熱的で、ただ国の難に征くとしている、いわゆる山沢の健児の風がまだあった。

宇都宮は、結城宗広の領で、いわば官軍の一拠点である。七日ほどの休養と装備をととのえ、また参陣の新手も加えて、

「一気に小山を抜け」

と、次の小山城へと、おめきかかった。

今春、足利方の桃井貞直とたたかって、何度戦ッても、勝てずに退いたところである。

そうした強固なる壁なのだ。

「退けぬぞ! このたびは」

じつに、ここを降すには、十三昼夜の猛攻また猛攻を要した。しかし、ついに破って城将の小山朝郷をとりこにした。そのかわりまた、みちのく軍の犠牲の大もいうまではない。

しかも、いたる所には、まだ小塁に拠る敵や残軍の反撃が途に待っていた。打ちはらい、打ち払い、すでに、秋は深み、十月もすぎかけている。――

「……利根川だ」

まんまんたる大河に面を吹かれたとき、人も馬もそそけだッた。