轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

13 黒白帖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 页

青空文庫

そんなあとでは、さばさばするとみえて。

「登子、おまえと夜も昼もひとつにこうして暮すなども、思えば病気のおかげだな。三十年もつれそいながらないことだった。不愍といっても追いつかぬが、おまえもとんだ阿修羅の女房になったものよの……」

また、あるときは、

「背なかの腫物をこの眼で見たい。鏡をよこせ」

と、登子にも鏡を持たせ、自分も鏡を持って、患部を合せ鏡に映して、その惨烈とも無残ともいいようのない自己の糜爛した肉体の一部をしげしげと見、

「なるほど。これは尊氏がやって来た“業”そのままな縮図だわえ。人のからだでは癰だが、国に腫れば地上の大乱そのものだ。身にこれを病むとはよくよくわしは宿命の子にちがいない。……母者は地蔵尊を信仰なされ、わしも地蔵尊を身の守りにして来たが、しょせん地蔵菩薩の御手でも救いがたい阿修羅の申し子だったとみえる」

と、深い吐息で言った日などもある。

かと思えば、高度の大熱に、こんこんとして、「基氏か、何しに来た?」と譫言に言ったり、また「筑紫はどうした、義詮はまだ返らんか」と、あらぬことを口走ったりした。けれど現ない口走りの多くは登子にも意味のうけとれないことが多かった。