轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

13 黒白帖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 页

青空文庫

単なる無常観に終り切れないで、如法長夜の闇にもなお朝の光を待ってやまないもの。それが明石ノ浦から興った当道覚一流の格調だった。

だから新しい。どこか明るい。一同、弾奏を終って、礼をすましたあとも、余韻はなお、盲人たちの明日への希望をどこかにただよい繞らせていた。そしてこのあいだに、観世清次は、道場の一隅で能舞に立つ身支度をし終り、琵琶をおいた大勢の者がひと息つくさまを、こなたで謹んで待っていた。

これはあらかじめ、検校とのあいだで「御縁にひかれてこよいの御法要につらなるからは」と、ふと話が出来あがっていたことにちがいない。元成が自作の一曲を清次に舞わせて、いまは敵も味方もない足利殿と楠木殿の霊に併せて回向したいと望み出たのである。もとより覚一に異存はなく、願うてもないよい御回向とよろこんで、盲に見られるものではなかったが、

「故人の霊も目でごらんあるのではない。われらも心の眼で拝見させていただきましょう」

と、なったもの。

すでに、宵の打合せで、小右京には鼓をたのみ、元成が太鼓を勤め、卯木は笛を持つことになっていた。地謡を謡い出たのは老法師右馬介である。