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くうちゅうひょうりゅういっしゅうかん
空中漂流一週間
海野 十三
「名作」1939(昭和14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,324 字 · 35 页
「ほう、なるほど下るわ下るわ。いよいよ墜落の第一歩か」
「あまり嚇すなよ」
と、キンチャコフがいって、
「へんなことをいうと、きっとそのとおりになるという法則がある。ちと慎めよ」
「なあに、今のうちにこれでも喰っておけ。そうすれば元気になるだろう」
六条は、携帯口糧をゴンドラの戸棚の中からひっぱりだして、キンチャコフにも分けてやった。戸棚の中には熱糧食だとか、固形ウィスキーなども入っていた。なにしろ予め六人分の食糧が収めてあったので、食糧ばかりは当分困らない。
ただ困ったのが水だ。水は、ゆうべ庶務の老人が持ちこんでくれたが、一人一日分しか入れてない。
携帯口糧は口の中で一杯になった。水を上から注ぎこまなければ、とても咽喉をとおらない。といって水は大事にしなければ、この先どんなことになるか分らない。六条は、目を白黒させながら、これも同様に目を白黒させて携帯の口糧をぱくついているキンチャコフの顔を見やった。
「おう、雲だ。いよいよ下るぞ」
ほんの僅かの間に、気球は密雲の中に包まれてしまった。見る見るうちに、服はびっしょり水玉をつけ、やがてそのうえを川のように流れおちる。